「失神外来」という名称ですが、患者さんの受信先を分かりやすくするためにあえて「失神」の名前を出しています。
海外には「Syncope Unit」と呼ばれる失神専門の診療部門があります。世界初の「Syncope Unit」と言われるイタリア、ラバーニャ(Lavagna:GE)の病院で研究・研修後に聖マリアンナ医科大学にて2012年より日本で初めて「失神外来」を開始し、さらに発展させるために「失神センター」を開設し失神診療を行ってきました。赴任に伴い浅草病院にて改めて「失神外来」を開始します。
日本循環器学会では不整脈や血圧が異常に低下するなどの理由で、脳全体の血流が一時的に低下するために引き起こされる意識消失を「失神」としています。通常、数秒から数分以内に後遺症なく回復します。一般には「気絶」「気を失う」「脳貧血」と呼ばれる症状です。一過性意識消失の中の一つの症状と考えていただければと思います。
意識がなくなる失神は脳神経の病気と思われがちですが、血圧や心拍数が問題で症状が出現することが多く、心臓病を専門とする循環器内科でも診療にあたります。
一過性意識消失の原因は様々で、失神以外の意識消失(てんかんなど)を含めると非常に広い領域から原因を調べる必要性があります。
意識がなくなりそうになる状態(前失神)やひどい立ち眩み、起床時に気分が悪くなどの症状が出現する方も関連領域として含まれてきます。
発症の状況・症状や心電図所見から危険性を評価して、発作頻度も踏まえ診療に当たります。
必要に応じて入院での検査・治療が必要となります。また、中には循環器疾患以外の原因で意識がなくなっていることもありますので、他の医療機関と連携し診療に当たります。
失神の診療は、ここ数年でチルト試験(図1)や植込み型心電図(図2)などの診断機器の進歩や治療の適応が進んでおり、以前は原因不明だった失神でも診断がつくようになっています。
反射性失神・起立性低血圧の診断に用います。(図1)
胸部の皮下に植え込み、発作時の心電図や不整脈の有無を確認します。
数年の電池寿命があります。(図2)
浅草病院内科の失神外来を担当させていただくことになりました、古川俊行と申します。
専門は循環器内科の不整脈疾患ですが、中でも「失神」に焦点をあてて診療を行ってきました。
「失神」は、全人口の4割程度が生涯で1度は経験するといわれていますが、専門とする医師が少ないこともあり発展途上にある医療分野です。
前職では年間500人程度の新規患者さんの診療に従事していました。内科・循環器の診療の中で失神診療も継続して行っていきたいと考えています。
平成10年 | 聖マリアンナ医科大学医学部卒 |
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平成21年 | 東京医科歯科大学 |