大腿骨頭の一部に血流が途絶えて壊死してしまう病気です。
日本全国で年間発生数は約2,000~3,000人で、30~50歳代の方に多く発症します。男女比は、1.8:1で男性が多いです。
大腿骨頭壊死の原因はまだわかっていない部分も多いです。ステロイドやアルコールなどが関係していることもありますが、多くは原因のわからないものです。
骨壊壊死が発生しただけでは、痛みが出てきません。壊死部が潰れると痛みが出てきます。
痛みは比較的に急に出現します。これが、ゆっくりと進行してくる変形性股関節症と異なる点です。大腿骨頭壊死症の発生から症状が出現するまでの間には数ヵ月から数年の時間差があります。
初期の痛みは安静によって2~3週で軽減することもありますが、大腿骨頭の圧潰の進行に伴って再び増強します。
診断には単純X線や、MRI、骨シンチグラフィー(放射性同位元素を注射して全身骨格を撮影する検査法)を使います。単純X線は病状の進行や変化を見ていくには適していますが、病気の初期ではわからないこともあります。そのため疑われたらMRIを撮ります。MRIで骨頭に帯状の低信号域などの特徴的な所見があれば、診断が確定します。他の部位に壊死が起きているか同時に診断したい場合には、骨シンチグラフィーが使用されます。
治療法は年齢、内科的合併症、職業、活動性、片側性か両側性か、壊死の大きさや位置などを考慮して決定します。
壊死の大きさや位置から骨頭がこれ以上潰れる可能性が低かったり、痛みが出ていない場合は保存療法が適応されます。
疼痛が強い時期には安静が大切です。杖を使用し体重をかけないようにしたり、体重維持、長距離歩行の制限、重量物の運搬禁止などの生活指導を行います。同時に疼痛に対しては鎮痛消炎剤の投与で対処します。
自覚症状があり圧潰の進行が予想されるときは手術を検討します。
手術には自分の骨を残す骨切り術と、人工関節に変えてしまう人工股関節置換術があります。
骨切り術は若年の方で、骨頭の変形がほとんど起きていない場合に適応です。
大腿骨の一部を切って、回転させたり内反させることで、壊死した部分に体重がかからないようにします。
変形が進んだり、高齢である場合には、人工股関節に置き換える手術をします。骨切り術に比べて早期から荷重が可能で、入院期間も短期間ですみます。以前の人工関節では耐久性の問題があり、将来再置換術が必要になる可能性がある若年者にはあまり行われませんでした。現在は人工股関節も改良されたので長期間持つようになってきました。
また近年、最小侵襲手術(MIS)が広がり、手術後の制限はほとんどなくなりました。骨切り術で筋肉や軟部組織に損傷があるとMISで手術をしても、脱臼しやすかったり違和感が残ったりします。そのため、以前に比べると比較的若くても最初から人工股関節を選択することが増えてきています。
人工股関節とは
血流が低下した範囲が壊死しますが、壊死部位は広がったりしません。
範囲が小さい場合は周囲から骨が新生されてきて、壊死部は修復されていきます。しかし、修復されるまでの間は壊死部は非常にもろく、軟骨や骨が悪くなってきてしまうと人工股関節が必要となってきます。
骨壊死部が潰れてこないように股関節に負荷をかけないことが重要です。
杖による免荷や、長距離歩行・階段昇降の制限、重量物の運搬を行わないなどを心がけてください。