前十字靭帯断裂

前十字靭帯とは

前十字靱帯(ACL: anterior cruciate ligament)とは膝関節の中にある靱帯で、大腿骨(だいたいこつ)と脛骨(けいこつ)をつないでいます。前十字靭帯の役割は、主に大腿骨に対して脛骨が前への移動を制御することと(前方安定性)と、捻りの力を制御すること(回旋方向への安定性)の2つがあります。運動するときなどに膝を安定させる役目をしています。

原因

膝前十字靱帯損傷は、ジャンプして着地したときや転倒したときなどに、膝関節に異常な回旋力が加わって起こることが多いです。受傷時には『ポキッ』とか『ぷつっ』いう音を感じることがあります。受傷後、痛みで歩けなくなることがありますが、最初は歩けていたのに徐々に膝が腫れて痛みが強くなることもあります。通常、痛みは4週間程度で改善してきます。

しかし、スポーツ復帰をした際に、再度膝がガクッと外れる感じが出てくる方もいます。また、膝前十字靱帯を損傷したままで運動や生活を続けていると、半月板や軟骨などの膝のクッションの役割をする組織が傷ついてきます。

症状

前十字靭帯損傷のために、「膝がぐらぐらする」「膝に力が入らない」「膝が腫れて、熱をもつ」などの症状を訴える方もいます。しかし、多くの方では前十字靭帯が損傷していても、しばらくの期間はほとんど無症状です。前十字靭帯が損傷したまま放置しておくことで、数か月から10年以上かけて膝の軟骨や半月板が傷んで症状が出ます。そのため、怪我をしてしばらくしたら痛みが治まってしまっても放置をしていいわけではないのです。

診断

ケガをしたときの状況を聞き(問診)、膝の診察、MRIなどの検査などを行って診断します。
前十字靭帯の損傷がおきていても、MRIでは前十字靭帯がつながっているように見える時や、診察でもわかりにくいこともあります。診断が非常に難しいときもあるので、専門家の診察が必要です。

治療

手術療法

損傷した前十字靭帯は、自然と回復することはありません。そのため、膝の軟骨や半月板が悪くならないように、手術で治療することが多いです。

手術では、膝前十字靱帯の代わりとなる筋や腱を、靭帯のあった場所に移植してくる再建術を行います。移植する腱には大きく2種類あります。1つは半腱様筋(はんけんようきん)という、太ももの後ろにある筋肉の腱を使用するものです。

もう1つは骨付き膝蓋腱(しつがいけん)という、膝のお皿の下にある腱を使用するものです。手術は内視鏡にて行われます。

リハビリ

膝前十字靱帯損傷後の早期回復と、再断裂予防のためにリハビリは非常に重要です。
リハビリでは、膝の曲げ伸ばし(可動域)訓練や、ももの筋肉(大腿四頭筋)の筋力トレーニングなどの基本的な訓練をまず行います。徐々に運動きょうどを上げていき、日常生活動作やジョギング、バランストレーニングなどを行っていきます。手術を行った場合には、完全な運動復帰に手術後8~9か月程度かかります。