股関節は、骨盤の骨の受け皿(臼蓋)と、太ももの骨(大腿骨)の頭(大腿骨頭)でできる関節です。
股関節は人間の関節の中で最も大きな関節で、体重をしっかり支えて歩くために非常に重要な役割を果たします。大腿骨頭は球状なので、他の関節に比べて動ける範囲が広いのが特徴です。
股関節は球状の大腿骨頭を、骨盤側のくぼんでいる臼蓋が覆い被さるようにできています。
臼蓋や大腿骨頭の表面には、正常な状態ではクッションの役割を果たす軟骨が存在し、衝撃をやわらげています。しかし、加齢などによって軟骨が摩耗すると、少しずつ骨が変形して痛みが生じるようになってきます。
軟骨がすり減りやすい原因は、生まれながらに臼蓋が小さ過ぎるといった臼蓋形成不全がある方が多いです。変形性股関節症で症状が出てくるのは、中高年の女性によく見られます。まだ初期の状態では、薬物療法と併せて筋力トレーニングや体重コントロールなどを行います。
病気がひどくなって、痛みのため歩行に苦労するようになると、人工関節に置き換える手術を行います。
変形性股関節症の症状には、股関節の痛み、関節の動かしづらさ、両足の長さの違い、歩きにくさなどがあります。
初期では、起き上がったときや立ったとき、歩き始めたときなどに、違和感や痛みが生じます。進行するにつれて歩行や階段でも痛みが増していきます。階段の上り下りに手すりが欠かせなくなるほか、足の爪切りや靴下を履くこと、正座をすることも難しくなるため、日常生活に支障を来たすことが多いです。
さらに進行すると安静にしていても常に痛んだり、夜寝ていても痛みが続いたりするようになります。
関節の軟骨が傷つき、関節のすき間がわずかに狭くなります。 この時期は、軽度の痛みや、動きはじめの痛みや違和感などの症状があります。 |
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関節の軟骨が広い範囲で変性・摩耗し、関節のすき間が明らかに狭くなります。 レントゲンでは骨嚢胞(こつのうほう)という空洞や、骨棘(こつきょく)という骨の出っ張りが現れます。痛みが慢性的にあることが多いです。歩行にも支障をきたし始めてきます。 |
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関節の軟骨がほとんどなくなるため、関節のすき間がなくなります。 レントゲンでは、股関節の著しい変形がみられます。歩行や階段昇降で強い痛みが生じたり、筋力が落ち、おしりや太ももが細くなり、左右の脚の長さが違ってしまうこともあります。 |
エックス線検査で関節の軟骨がすり減って、関節の隙間が狭くなっているのを調べます。
病気が進むにつれて、軟骨が薄くなって関節の隙間が狭くなったり、軟骨の下の骨が硬くなったりしだします。さらに進行すると、関節の中や周囲に、とがったトゲのような骨棘や骨の空洞も生じてきます。必要に応じてCTやMRIなどの検査も追加して行います。軟骨の摩耗や骨の変性は一度始まったら止まらないと言われています。臼蓋の角度や軟骨のすり減っている範囲などからある程度は、今後の経過を予測もでき、定期的に検査をしていきます。
早期の場合で、日常生活に支障がない場合は、手術をしない保存療法をおこないます。
保存療法は、痛み止めの内服や、リハビリ、日常生活の見直しなどがあります。
痛みが強くなり、外出をためらうようになったら、手術も検討します。手術は人工関節が主ですが、膝では関節鏡手術や骨切り術なども行っています。
痛み止めの服用や、股関節の負担を減らすための体重コントロールや、水中ウォーキングなどの筋力トレーニングがあります。
また、杖を使うことで股関節への負担を減らして、歩くのが楽になり進行を遅らせることもできます。また病院やクリニックでは温熱療法や赤外線などの物療も行われます。浅草病院では、痛みに合わせた飲み薬の種類や飲み方の調整を行います。また日常生活での動作の工夫や歩き方の指導を行っています。
運動療法 | ストレッチ、ウォーキング、筋力強化、水中歩行など |
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温熱療法 | 赤外線照射装置、超音波治療器 など |
薬物療法 | 消炎鎮痛薬(内用・座薬)、注射 など |
装具療法 | 補高靴、杖 など |
保存療法で改善がみられない場合、年齢や生活スタイルなどをふまえて手術を検討します。
関節がそれほど傷んでいない場合は、寛骨臼回転骨切り術が有効です。
関節近くの骨を切ることで関節の向きを矯正し、臼蓋の覆いを増やすことで変形性股関節症の進行を遅らせることもできます。
変形が進んでいる場合は、赤軟骨と傷んだ骨を取り除き、金属やセラミック、ポリエチレンなどの人工股関節に置き換える人工股関節全置換術を行います。人工股関節全置換術を行うことで、痛みがほぼ取れ、左右の足の長さのずれも少なくなるため、歩きやすく快適な生活が送れるようになります。
人工股関節とは